★DSM-5の診断基準を簡潔にまとめると
① 複数の状況で社会的コミュニケーションや対人相互反応における持続的な欠陥あり(非言語的コミュニケーション含む)。
② 行動、興味、活動の限定された反復的な行動様式あり(柔軟性に欠ける)。感覚刺激に対する過敏さや鈍感さあり。
③ ⑴社会的コミュニケーションの欠陥と⑵限定された反復行動の2つに対して重症度分類を行う。(どの程度支援が必要な状態か?)
④ 知的障害、言語障害、その他神経発達症などの合併評価
⑤ 社会的コミュニケーションの著しい欠陥のみの場合は社会的コミュニケーション症となる。
※詳しく診断基準を知りたい方はハートクリニックのホームページに記載があります。
・診断基準は便宜上設定されてはいるものの知的障害、学習障害、ADHDとの近似性、重複性、個人の重症度の違い、病因・病態が解明されていない点から実際はクリアカットに診断を付けるのは難しい。
★上記の症状が疑わしければ
・問診→国語と算数どちらが得意?(算数が得意な傾向あり)、何かこだわりは?、好きな食べ物・嫌いな食べ物は?(食の好みに偏りあり)、音や光に敏感ではないか?、両親の性格は?(どういう環境で育ったか知るため、学者肌ではないか?など)、小学生時代動き回ることは?(ADHD等の合併あり)、その他合併している精神疾患はないか?(知的発達症、言語障害、緊張病)などを質問する。
・検査→AQ(自閉症スペクトラム指数)で自閉症スペクトラム傾向が分かる。カットオフ33点以上(ある千葉大学の調査では自閉症約90%、健常者は3%弱))。内容は社会的スキル、注意の切り替え、細部への注意、コミュニケーション、想像力に分類される。また、得意不得意の分野を知るためにWAIS-Ⅲ(成人知能検査)でIQを測定する。
★治療
当然個人差はあるが、周囲の環境調整や社会的支援によって改善の余地はある。
・環境調整
①可能な範囲で刺激の少ない穏やかな環境を用意する。(急激な環境の変化に対応できない、イヤーマフやサングラスなどで聴覚・視覚刺激をやわらげる工夫もされている、眼科や耳鼻科とも協力)
②簡潔なパターンで生活が回るよう工夫する。(必要なものをとりやすい場所においておく)
③得意不得意を明らかにして、周囲がそれを理解し、何がストレスになっているかを考え、解決する努力をする。
・社会的支援
障害年金や障害者雇用枠で働くなど。
・薬物治療
現在のところASDの中核症状(コミュニケーションの欠陥や反復行動)を直接的に改善する薬剤はない。2021年4月20日に発表された自閉スペクトラム症に対する最先端の精神薬理学的治療のシステマティックレビュー(Progress in Neuro-Psychopharmacology&Biological Psychiatry誌オンライン版2021年4月20日号)によると、多動性、衝動性、興奮、気質性立腹、自己または他者への攻撃性に対する介入ではリスペリドンやアリピプラゾールなどの非定型抗精神病薬が第一選択薬である。三環系抗うつ薬は有効性が不確実で重大な有害事象が懸念されるため使用が減少している。SSRI(特にfluoxetineとセルトラリン)は反復行動(不安症状や強迫症状)や過敏性/興奮性の治療に有効な可能性があり、ミルタザピンは睡眠に問題を抱える患者に役立つ可能性がある。その他のランダム化比較試験がなされているものとして、低用量のbuspironeと行動介入の併用(反復行動に)、アトモキセチン(ADHD合併例に)、クロニジン・グアンファシン(多動性や情動行動に)がある。
※英語の薬剤は国内採用なし
参考文献:DSM-5、子どものための精神医学(かなりおすすめの本、人の精神発達の原点が分かる、発達障害への考え方が変わる)
★個人的な考え
・自閉スペクトラム症という診断名はあるが、かなり個人差が大きいと感じた。能力の高さや得意不得意はそれぞれで介入の仕方も変わってくる。しかし、障害が軽度であると本人も周囲も病気という認識がなく、診断がつかないままにストレスフルな生活を強いられる。抑うつや発作的な自傷行為に走る場合もあり、早期の環境調整などの介入が重要になってくる。まずは、病気のことを周囲が理解する必要があるため、正しい知識が広まることが重要と感じた。今はYoutubeなどで自閉スペクトラム症の方が疾患に関する情報を発信していたりと昔よりも情報にアクセスしやすい環境にある。間違った情報には注意したほうがいいが、こういったツールを使うことは有用だと思う。