双極性障害

双極性障害患者の担当となった。病態や治療法について調べてみる。

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★特徴

・まず疾患のイメージがしやすい一般的な例を示す

”37歳、男性。内装業を営んでいました。18歳の頃にうつ病を患ったことがありましたが、その後は、大きな問題もなく過ごしてきました。しかし、1年ほど前から気分が不安定になりました。事業の業績は芳しくないにもかかわらず、「来年には日本を代表する会社になる」と真顔で語たり、返済の見込みの薄い借金や、不相応な設備投資をするようになりました。ほとんど睡眠をとらずに仕事や遊びに時間を割き、飲食店で隣り合わせた女性に声をかけて交際を持ちかけるなど、私生活の行動もやたら積極的です。そうした状態が4ヵ月ほど続いたかと思うと、かつてのうつ病をぶり返したように気分がしずみ、自殺を考えることもあります。仕事も遊びも手につきません。周囲は困惑し、顧客や有人も離れていきました。うつ状態の時に精神科クリニックを受診したところ、「双極I型障害」と診断されました。”

(参照:ハートクリニック|こころのはなし (e-heartclinic.com)

★分類

・1型→少なくとも1回の抑うつエピソード+少なくとも1回のエピソード

・2型→少なくとも1回の抑うつエピソード+少なくとも1回の軽躁エピソード

※躁状態と軽躁状態の違い

→躁状態は家庭や仕事に重大な支障をきたし、人生に大きな傷跡を残してしまいかねないため、入院が必要になるほどの激しい状態。軽躁状態は周りから見て明らかに気分が高揚しており、眠らなくても大丈夫で仕事もはかどり、周りも自分もそれほどは困らない状態。(参照:厚生労働省ホームページ)

★治療

(参照:日本うつ病学会治療ガイドラインⅠ.双極性障害)

・なぜ治療するか?

→放置すると何度もうつ状態と躁状態を繰り返し、その間に人間関係、社会的信用、仕事や家庭が崩れていく。

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・治療の考え方

→躁病エピソードと抑うつエピソードの双方の治療を考える必要がある(バランス大事、抗うつ薬で躁転しやすくなる)。また、長期的な再発予防も必要。

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・躁病エピソード→抑うつと比較して急速に悪化することが多く、治療が追いつかない。しかし、患者の日常生活や社会に与える影響も大きく早急な対応が必要。外来では対応できずにしばしば入院が必要となる。薬物治療は気分安定薬(リチウム)が第一選択薬と考えられてきたが、即効性が期待できないため鎮静作用の強い抗精神病薬(オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、リスペリドン、軽症はリチウム単剤)をはじめから併用することが多い。3~4週間経過をみて、抗精神病薬の漸減・中止をし、その後は気分安定薬単独で維持していくのが一般的。しかし、近頃は非定型抗精神病薬に気分安定薬様の作用が認められたという報告が相次いでおり、非定型抗精神病薬の単独療法の可能性についても議論されている。

※気分安定薬まとめ(躁に対して)

①リチウム→1949年より躁病治療の第一選択薬。リチウムは即効性がなく、オランザピンの効果に追いつくまで10日間かかる(Hirschfeld et al, 2003)。リチウムが反応しやすい患者は典型的躁病(多幸感、爽快気分)の方で、⑴被害妄想など気分に一致しない精神病像を示す患者、⑵混合状態や焦燥感・不快気分が目立つ患者、⑶再発を繰り返す(10回以上)患者には反応しにくい。副作用は手指の微細な振戦(27%)、多尿(30-35%)、甲状腺機能低下症(5-35%)、催奇形性(Ebstein奇形、妊婦は禁忌)などがある。有効濃度と中毒の境界が近いが、躁病エピソードでは1.0mEq/L前後で維持することが必要。血中濃度測定は投与初期または増量したときに週に1回の頻度で、朝方の服用前に測定。併用注意薬はNSAIDsでリチウムの腎臓からの排泄が阻害されて、リチウム中毒の危険性が生じるから。

②バルプロ酸→再発回数が多い躁病患者にも効果を発揮し(Swann et al,1999)、焦燥感の強い患者や混合状態、ラピッドサイクラー(躁鬱の変動が頻繁になる急速交代型)にも奏功する場合あり。副作用は嘔気(7~34%)、過鎮静(7~16%)、血小板減少(27%)、白血球減少(10%)、頭痛(10%)など(Ehret and Levin, 2006)。多嚢胞性卵胞症候群、高アンモニア血症、膵炎、薬疹にも注意。催奇形性もあり、薬物代謝酵素を阻害するため併用薬の濃度を上げることも。躁状態に対する有効濃度は70μg/ml以上(Allen et al, 2006)で、場合によっては100μg/mlをやや超える必要あり。しかし、120μg/mlを超えないようにする。

③カルバマゼピン→メタ解析にて抗躁効果が確認された(Smith et al, 2007a;Yildiz et al, 2011)。副作用はめまい(44%)、SIADH(5~40%)、傾眠(32%)、嘔気(29%)・嘔吐(18%)、薬疹(13%)などがある(Ehret and Levin, 2006)。肝機能障害、血小板減少、白血球減少、Stevens-Johnson症候群にも注意。薬物代謝酵素を誘導するため、併用薬の濃度を下げることも。抗てんかん薬の有効血中濃度である5~10μg/mlを参考にしている。中毒が疑われるときは早朝服薬前の濃度を測定する。

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・抑うつエピソード→注意点としては⑴過少診断されがち、⑵難治例が多い、⑶自殺のリスク高い、⑷躁転のリスクあり。エビデンスに基づき推奨される薬剤は、①と同様に抗精神病薬、気分安定薬である。しかし、用法や薬剤の種類は異なる。具体的にはクエチアピン徐放剤300㎎/日(徐放剤以外は適応外)、リチウム(日本は保険適応外、0.8mEq/Lに到達後8週間は最低でも経過観察)、オランザピン(5~20㎎/日)、ルラシドン(20~60㎎/日)、ラモトリギン(日本は保険適応外、200㎎/日、HRSDが25点の症例)が単剤治療として推奨される。

HRSD(Hamilton Rating Scale for Depression)→ハミルトンうつ病評価尺度。HAM-D(HAMilton-Depression scale)ともいう。うつ病の重症度評価と回復評価。多重項目質問票(17問、睡眠の評価に重点)。医師などの専門家が記入するため研究向きで臨床現場でのスクリーニングにはCES-Dが用いられる。18~20点以上でうつ病と判断する臨床研究や治験が多い。(参照:元住吉こころみクリニックサイト)

CES-D(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)→自記式のうつ病評価。20項目(16のネガティブ項目と4のポジティブ項目)。診断の補助や治療効果判定に用いられる。(参照:元住吉こころみクリニックサイト)

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